会員紹介記事Vol.002 安本哲之助様

1.1 システム監査及びSAAJと関わりを持たれた経緯

 Q.システム監査との関わりは?

1959年日本生命のユーザ部門からスタートし、その後1983年から検査部門でEDP検査を経験したことが、この世界に入るきっかけであった。しかし当時、監査の判断基準となるシステム監査関係の基準類が整備されておらず、指摘事項についてユーザ部門やシステム部門の理解は、なかなか得られないものがあり苦労した。
そのような時代、FISCの米国システム監査調査団に参加する機会に恵まれた。
当時、日本の金融検査では検査マニュアルも非公開があたりまえであったが、米国では監督当局が用いるEDP検査マニュアルが公開され、監督当局、被監査会社、監査人の3者が同じ基準を共有している実態を知り大いに感銘を受けた。この米国調査で得られた資料類からFISCのシステム監査指針をはじめとし、様々な手引き書にブレークダウンされ、日本の金融機関のシステム監査が体系的に整備されるきっかけになったと思う。
協会では1993年に副会長、近畿支部長を勤めた他、システム監査実践マニュアル(初版)の第1章を執筆した。

1.2 過去に実施されたシステム監査の中で、思い出に残る事例

Q.どれくらいのシステム監査に関与されましたか? 思い出に残る事例なども。

日本生命時代は、毎月1,2テーマくらいシステム監査(内部監査)を行った。その後1999年から現在の情報システム監査株式会社でビジネスとして監査を行うようになった。
外部監査の対象は中央省庁、地方自治体、民間企業等あるが、思い出に残る事例として、宇治市の有名な情報漏洩事件をきっかけにしたシステム監査がある。それまで監査報告書は内部の利用が主目的であったが、弊社の監査報告書50頁ほどが市議会や広く外部に全文が公開された事は画期的であったと思う。その後、慰謝料として高額な判例が出たこともあり、地方自治体でのシステム監査は一気に加速された。

Q.内部監査と外部監査を両方経験された上での違いなどありましたら。

内部監査では改善を実現させるためフォローが大切である。外部監査ではフォローまで関与出来ない場合が多い。また外部監査は、現在多くのものが入札制であるので継続して行うことが難しい。発注者側として、毎回同じ所だともたれ合いになる危険性もあるのはわかるが、スポット的監査になるので、その辺が寂しい。

2.1 現在のお仕事、著作物について

Q.現在のお仕事をご紹介ください

一つは、人材育成で、鳥取環境大学でシステム監査、経営情報処理論の講義をこの12年間行っている。
鳥取環境大学は、県と市の支援があり建物、図書、勉学の環境が整備されており、「環境」というテーマであるがゆえ珍しく全国から学生が集まっている。
また情報システム監査株式会社で提案書や監査結果のレビューを行い、テーマ毎にアドバイスを行っている。

2.2 趣味として取り組まれているもの

Q.お仕事以外に趣味等は?

和歌山や高知まで出向き釣りを楽しんでいる。仕事では、無駄の排除や業務の効率化を
訴えていたが趣味は真逆で、高いものについている。場所や季節によりエサや選択する道具が異なるため、釣りは文化だと思っている。最近は素人でも魚群探知機や電動リールが手に入るようになり面白みは少なくなった。

3.1 今後取り組みたいと思われている事柄

Q.今後の取り組みについて

現在は、監査の実務の現場に出ることは少ないが、現在の会社で監査報告書のレビュー等を通して後進の指導に当たっている。また、大学での指導もできるだけ続けて行きたい。

3.2 システム監査の展望、SAAJの展望について

Q.システム監査の法制化について

これまでで一番悔しい思いをしたのは、お隣の韓国でシステム監査の法制化が先に実施されたことである。そのきっかけは、日生のシステム監査の事例を掲載したレポートが韓国の方の目に触れ、システム監査調査団が日本にこられた。そのときシステム監査を定着させるには法制化が必要と力説した。その結果、韓国では官公庁・自治体においてシステム監査の実施が義務化された。
日本においてもシステム監査の法制化が必要であり、特に重要インフラに関わるシステムについては、必要性が高い。したがって、システム監査人の育成も重要であり、もっと多くの監査人が必要である。
(※詳細は、下記論文を是非ご参照下さい。)
> http://www.isanet.co.jp/_siryo/pdf/tottri_20091022.pdf

 

<所感>

システム監査基準が作成される過程(当時のEDP検査やFISCの報告書等)の話を、伺うことができ、立上げることの難しさと、その情熱に感銘を受けました。安本先生がつけられた道筋を、前につないでいく必要があると感じています。
また、検査マニュアルが非公開から公開へとなることで体系的な整備へとつながったことは、改めて、知識の共有化の重要性を再認識いたしました。
最後に、お忙しい中にもかかわらず、取材にご協力いただきましたこと厚く御礼申し上げます。今後とも、宜しくご指導をお願いします。

取材担当 文責:永田淳次、林裕正、金子力造