報告者:No 169 林 裕正
1.テーマ : マイナンバー法案によって変わる事業者における個人情報管理
2.講師 : 弁護士法人第一法律事務所 弁護士 福本 洋一 様
3.開催日時 : 2012年5月18日(金) 18:30~20:30
4.開催場所 : 大阪大学 中之島センター 2階 講義室201
5.講演概要
(講師の福本先生より頂いた講演概要を、先生の了解を頂いた上で引用致します。)
「マイナンバー法案」(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)は、本年2月14日に閣議決定され、第180回国会に提出されている。
同法案は、行政機関等が国民を識別するための「個人番号」を利用することで、社会保障・税に関する行政事務において効率的な情報の管理・利用・授受を実現する「社会保障・税番号制度」を導入するものである。同制度については、従前より国家による個人のプライバシー侵害のおそれに関して議論がなされているが、同法案によって、事業者の行政に対する届出・報告事務(例えば、従業員の健康保険や厚生年金の加入届出の事務等)における「個人番号」の利用及びそれに伴う事業者の「個人番号」を含む個人情報の取扱いに関する新たな義務が事業者に対して課されることに関してはあまり注目されていない。しかしながら、同法案の定める事業者の義務は、「個人番号」を含む個人情報について個人情報保護法よりも厳格な取扱規制であり、事業者による「個人番号」を含む個人情報のデータベース作成も原則禁止されている。その結果、同法案は、事業者における個人情報管理や個人情報を取り扱うシステムの利用に対して重大な影響を及ぼすおそれがあり、従業員・顧客情報に関するシステムに対する監査において新たな視点が求められる。以上のように、「マイナンバー法案」は、4月16日時点においては未だ法律として成立していないが、事業者の個人情報管理に重大な影響を及ぼすおそれが高いことから紹介する次第である。
6.感想
福本先生は、現役の弁護士でありながら、システム監査技術者試験に合格され、また日本システム監査人協会に加盟され近畿支部の一員として研究活動に参加されています。近畿支部の研究会活動の中では、法律の専門家の立場から有益な意見やアドバイスを頂いています。
今回の講演テーマは、概要にもあるように、マイナンバー法案に含まれている一般事業者の個人情報管理に関わる影響を解説されたものでした。一般的には、マイナンバー制度は、地方自治体を中心とした行政組織の情報システムへの影響が大きいと理解されていると思われますが、今回の解説で、その影響範囲がかなり広範囲になることが想定されることが分かりました。もちろん、各事業体の戦略も踏まえ、個人番号の利活用をどの程度まで行うかにより、情報システムへの影響範囲は様々であると考えられます。まだ、法案の成立は不透明な状況ですが、今後の動向をシステム監査人としても注目していく必要があると改めて感じました。
以上