SAAJ近畿支部第146回定例研究会報告(報告者:松本拓也)

報告者:No.2520 松本拓也

1.テーマ  : 「ゴルフ場の総合基地化提言」
2.講師   : 株式会社 エスシーエイエヌ  代表取締役 中田 和男氏
3.開催日時 : 2014年5月16日(金) 18:30~20:30
4.開催場所 : 大阪大学中之島センター2階 講義室201

5.講演概要 :

nakata講師は、ゴルフ場が有する膨大な資産と、水源涵養、環境保護、気候変動緩和等の貴重な機能に着目し、その有効活用を図ることが、国土保全上、環境保護上有意義であると考えた。今回は、その活用方策として、ゴルフ場の総合基地化について講演していただいた。

(1)ゴルフ場の総合基地化とは

講師は、ゴルフをプレイするというゴルフ場本来の機能を残しつつ、ゴルフ場の有する資産・機能を活用して後述の3つの基地機能を構成し、活用していくことを想定されている。このゴルフ場の総合基地化の提言は、システム監査人にとっても、総合基地化に関連する情報システムの整備、管理を通じて社会に寄与する機会を得ることになり、大いに意義を有するものと考えている。

(2)基地機能の概要

①国土保全及び自然エネルギー基地 全国各地に広く分布するゴルフ場の広大な敷地の有する水源涵養、環境保護、気候変動緩和等の機能を維持し、更に、敷地を有効活用し、太陽エネルギー、風力、バイオマス(刈芝等の活用)等の自然エネルギーを活用するエネルギー基地としても利用する。なお、ゴルフ場の総合エネルギー基地化は、スマートグリッド化によるエネルギーの地産地消を目指すものである。

②防災支援基地 東南海地震等の広域災害に際し、ゴルフ場の有する施設(管理棟、食堂、浴場、洗面所等)を開放して避難者の一時滞留を支援するほか、救難用ヘリポート等の支援用地の提供、支援資材の貯蔵箇所の提供等、広大な敷地を活用して防災支援の重要な役割を果たす。また、上記①のように自然エネルギー基地化することで、非常用のエネルギー基地としても威力を発揮できる。

③近隣センター基地 今日、限界集落の増大等、地域の居住環境の悪化が懸念されているが、ゴルフ場の施設を活用して、近隣住民の生活改善に寄与する余地が大いにある。場合によっては、近隣集落と連携して、食堂、ゴルフコース周辺の景観、浴場等を近隣に開放する近隣センター基地も有力なゴルフ場活用策となる。

(3)総合基地化とITとの関連

・エネルギー管理システム他の監視制御システムは、自動制御系統であり、その信頼性、安全性、可用性の確保が焦点になる。そこで、フェイルセイフ機能に着目して、開発・運用に関与していくべきである。 ・防災支援のための各種管理システム、通信システムにおいては、情報セキュリティ、プライバシー保護への配慮が必要となる。運用時の可用性確保にも重点を置くべきと考える。 ・近隣センター機能を発揮するためには、近隣住民等の顧客管理システムの充実が必要となるが、ここでは、プライバシー保護について考慮することが必要となる。 ・ゴルフ場は、上記のITへの対応について、必ずしも有用な人材を有していない。このため、各種情報システムの開発・運用・監査について有効な対応が取れるとは限らない。そこで、システム監査人は、他のIT専門家(中小企業診断士、ITコーディネータ等)と連携して、ゴルフ場のIT強化について支援を行う必要が出てくる。 ・一つの方策として、中小企業の会計参与の如き、情報参与といった人材の配置を提言したい。又、このような人材配置に対してインセンティブを与える等の施策も必要と考える。

(4)今後の取り組みの方向性

・ゴルフ場の総合基地化については、国の助成、ゴルフ場の条件整備のいずれを見ても、計画的な取り組みが必要で、本提言は、今のところ、まったくの提案段階に過ぎない。これから、各位のご支援を得て、提言の充実、各方面への働きかけ等を行っていきたい。尚、現在、再生可能エネルギーの普及を促す各種助成策が政府をはじめ、各自治体において講じられているが、これらの活用も考慮する必要がある。

(5)まとめ

下記の理由により、ゴルフ場の総合基地化を提言する。 ・ゴルフ場は、貴重な国土資産であり、その機能の維持を図ることは、国民経済上大いに意義を有している。 ・ゴルフ場の総合基地化を図ることによって、再生可能エネルギーの導入等国民経済にも貢献でき、又、その広大な敷地を活用して、防災支援においても重要な位置を占めることができる。 ・近隣と連携することにより、地域住民に資する近隣センター機能を発揮することができる。

6.所感

大きな資産・敷地を有するゴルフ場を、ゴルフプレイ以外にも有効に活用できないかという点に着目されており、私はゴルフをプレイしないのですが、共感できる内容だと思います。ただ、今回の提言にあるような3種の機能については、ゴルフ場の立地、近隣住民の世帯構成、交通アクセス等、ゴルフ場の周辺環境により、その需要は異なると感じます。そのため、日本国内にあるゴルフ場のうち、この機能を導入することに効果がある施設がどの程度あるのかについては、今後の課題となると考えます。

以上