会員番号 1710 小河 裕一
1.テーマ 「仮想通貨とブロックチェーン技術の現状と課題」
2.講師 京都聖母女学院短期大学 生活科学科 准教授 荒牧 裕一氏
3.開催日時 2017年9月15日(金) 18:30〜20:30
4.開催場所 大阪大学中之島センター 2階 講義室201
5.講演概要
(1)テーマ
ビットコインを始めとする「仮想通貨」に関する最近の動きと中核となる技術である「ブロックチェーン」についての解説およびその技術の活用したシステム例と監査における注意点を解説いただきました。
(2)最近の動き
・資金決済法の改正(2016年5月改正、2017年4月施工)
資金決済法で「仮想通貨の定義」および「仮想通貨交換業者の規制」が定義された。
・The DAO事件(2016年6月)
Ethereum(ビットコインとは別の仮想通貨)上の1プロジェクトであるThe DAOのコードに脆弱性があり360万ETHが流出。この流出をなかったことにするブロックチェーンの分岐(ハードフォーク)を実施したところ反対派によりEthereumとEthereum Classicという「分裂」に至った。
・セグリゲイテッド・ウィットネス(Segwit)有効化
ビットコインの取引が活発になり、ブロックチェーンのブロック容量の小ささが問題となる(スケーラビリティ問題)。それを解決するための技術(ブロックの記録容量は変えず、認証データを整理して取引記録件数を2倍弱に引き上げ)が有効化された。
・Bitcoin Cash騒動
スケーラビリティ問題を解決するための”Segwit”に合意しない中国のマイナー(※1:後述)が、ハードフォークを実施することで、新しい仮想通貨”Bitcoin Cash”を発行。ブロックサイズ上限を8Mに拡大(Bitcoinは1M)等の変更がある。
(3)ビットコインの仕組み(ブロックチェーン)
・ビットコインでの取引
ビットコインは大きな「取引台帳」の中にデジタル署名を使った「取引記録」がネット上にあり、それによって通貨発行や取引が管理されている。この「取引記録」がブロックと呼ばれ「取引台帳」がブロックチェーンと呼ばれている。デジタル署名と合わせて使われることで二重取引が防止されている。
・ブロックチェーンとは
発生した取引は「ブロック」を生成して記録。ネットワーク上に分散して保存されている過去の取引に生成された「ブロック」をつなげることで取引台帳を作成する。この取引台帳が「ブロックチェーン」。
すでにあるブロックチェーンに新しいブロックをつなげるためにはブロックチェーンに記録されているデータと追記の取引データの整合性を取って正確に記録することが求められる。
・ブロックチェーンの承認処理
上記整合性をとる上で一定の条件を満たしたキー(nonce)を膨大なCPUパワーを使って見つけ出し承認作業を行う作業が「マイニング(採掘)」と呼ばれ、それを行う人を「マイナー(※1)」と呼ぶ。
この承認処理に対してビットコインが支払われる(新規発行:現在は12.5BTC)
・承認処理のアルゴリズム
承認処理には”Proof of Work”,”Proof of Stake”,”Proof of Importance”等がある
(4)ブロックチェーンの活用
・ブロックチェーン技術をさまざまな分野に
ビットコインで使われているブロックチェーン技術。これを「データ追加型のデータベース」として色々な分野に応用できると想定される。例として、文書存在証明やクラウドファンディング等。
分岐が簡単にできるが併合は難しい、全ての活動がブロックチェーンに記録される保障が無い等、問題点もあるが、現在実証実験が行われており今後期待される技術である。
(5)ブロックチェーン技術を使ったシステムに対する監査の留意点
・分岐が容易
分岐(フォーク)が可能であり、分岐しているかどうかの検証が難しいためメインチェーンであることを客観的に確認できる仕組みが必要である。
またチェーンの確定(ファナライズ)の時間がかかるためチェーン確定とみなす基準が適正かどうかを点検することも必要である。
ほかに「網羅性」や「時刻管理」が適正に行われているか?も重要な観点となる。
6.所感
ビットコイン等、「仮想通貨」に関しては名前をしっているだけで「どのような仕組みなのか?」「なぜ投資対象になるのか?」等々全くわからない状況で参加しましたが、講義内容とインターネット上にある情報をつなげ合わせてみて、非常に面白い「世界」だということがわかりました。
Mt.GOX事件等あり投資という観点では「仮想通貨は危険」という意識があり触れないでいましたが、この世界で使われている技術は非常に興味深く、詳しく理解してみる価値があるかな?と今回のお話を聞いて感じました。