会員番号 1428 中田 和男(近畿支部)
1.テーマ 「公会計の複式簿記・発生主義会計がスタート。そのシステム監査上の課題は?」
2.講師 ジョイント・ホールディングス(株)IFRSグループ・ディレクター
公認システム監査人、公共政策・IFRSコンサルタント、行政書士 田淵 隆明氏
3.開催日時 2018年5月19日(土) 15:00~17:00
4.開催場所 大阪大学中之島センター 7階 講義室702
5.講演概要 2018年度より地方自治体の複式簿記・発生主義会計がスタートしたことに伴い、そのシステム監査上の課題を具体的な自治体例を取り上げながら分析する。
<講演内容>
公会計の複式簿記・発生主義会計がスタートした。2018年4月1日より記帳開始、最初の開示は2019年3月31日付決算からとなる。公会計への関与は、システム監査人にとっても関心事であり、時宜に即した講演を頂いた。
以下、項目別に説明する。
(1)公会計と企業会計の関係
公会計は、開示上からは、単式簿記形式のCFのみとなっていたが、2019年3月決算より、複式簿記形式で、企業会計同様、BS、PL、SS、CFを開示することとなる。
財務諸表の名称は、公会計としての名称を採用する。CFは、公会計の特性上、直接法の採用が必要である。個別決算に加え、連結決算も行う。外郭団体はフル連結し、一部事務組合を比例連結する。仕訳は、原則毎日仕訳とする(東京都方式)。総務省基準では、当面実施せず。全国レベルでの対応状況調査では、都道府県、指定都市、一般市区町村とも、ほぼ29年度までに実施を予定しているが、一部は30年度以降にずれこむ見込みである。
(2)減価償却に関する留意事項
公会計においては、現金主義が続いたため、減価償却や、減損に対する意識は希薄であるが、今後は採り入れる必要がある。償却方式は、企業会計同様国税方式になるが、従来実施してきた固定資産税評価用の償却計算とは、方式が異なるため、留意する必要がある。
(3)基礎自治体における対応の実情[1]
某基礎自治体での対応の状況としては、2017年度は、2016年度3月期のデータで開始BSのテストを行い順調に検証を行った。本番の開始BSは、2017年度の決算データで作成するので、2018年11月を目途に完成させる予定である。2017年度より、固定資産台帳の入力を開始したが、出納期間完了後の2018年6月から最新データを入力する。
難関と認識されている事項としては、①期首BSの整備、②固定資産台帳の整備、③時価の再評価、④耐用年数、⑤償却方法の確認、が挙げられる。
課題としては、①公会計独自の運用ルールの開発者側への説明、②職員の意識改革、特に「発生主義」と「毎日仕訳」が挙げられる。
(4)某基礎自治体における対応の実情[2]
一般市区町村との会合については、特記事項はなく、省略する。
(5)某自治体のシステム・トラブルとシステム監査(2018年版)
講師がロビー活動の一環として取り組んでおられる、某基礎自治体のシステム・トラブルの発生と、その後の経過・対処について、最近の状況まで含め推移を説明された。
(6)[補足]新会計基準の概要
講師のライフワークである新会計基準の概要について講演された。
トピックスとしては、①工事進行基準は廃止されない(IFRS15、IFRS16参照)、②収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)、といったものが挙げられた。
6.所感
講師の該博な会計基準に関する知見(特にIFRSを中心とする国際基準の動向に関するもの)と豊富なコンサルタント実績に裏打ちされた講演内容は、大いに示唆に富んだものとなった。
又、講師の協会活動の一環であるロビー活動の一端を垣間見ることができる、某基礎自治体のシステム・トラブルに対する一連のコンサルタント状況も興味深く伺うことができた。受講者各位にとっても参考になるものと考えられる。
以上、第173回定例研究会の田淵隆明氏の講演について報告するが、講演内容詳細については、講演原稿に詳述されているので、近畿支部に問い合わせられたい。
以上