【テーマ】 | 国際会計基準(IFRS)のシステム対応の落とし穴 ~あなたの知らない意外な盲点~ |
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【講 師】 | 株式会社アロウズコンサルティング社 マネージャー 田淵 隆明 氏 |
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【日 時】 | 2011年5月21日 18:30~20:30 | |
【場 所】 | 大阪大学中之島センター 2階講義室 | |
参考情報 | IFRSについての詳細は、講師の田淵氏が 「IFRS エキスパート・コラム」でも連載しております。 ご興味のあるかたは、是非ご参照下さい。 |
1.講演概要
・(制御系以外の)ソフトウェアは PL 法対象にならない。そのため、ソフトウェアの不備や仕様不足によって誤った会計報告を提出した場合、ユーザである報告者にペナルティが課せられる。
・3月決算である企業の場合、2015/3 に IFRS 移行しなくてはならないため、2013/3 には新システムで IFRS にのっとった形での BS の作成を行わなくてはならない。(報告は2年間分のため)1年間トライアルを行うと考えると 2012/3 にはシステム導入を完了させて運用を始めないといけない。
・IFRS と GAAP の両方で開示しなくてはならない期間は 2 重元帳方式も可能だが、大変パワーが必要となるため、個別会計データは現地の GAAP で作成し、組換えデータのみ作成することが望ましい。
・現行の多くの連結会計システムでは「少数株主持分」は一科目に合算されてしまうが、「連結包括利益計算書」を作成するためには、内訳科目毎に分離して連結処理する必要がある。
・現在、日本では「三分割法(英米法)」と「売り上げ原価対立法(大陸法 IFRS 基準)」が使われているが、IFRS では「大陸法」しか使用されない。
・IFRS において、キャッシュフロー計算書は「直説法へ一本化する」方向で検討されている。→現行の多くの連結会計システムでは「売上原価」(「製造原価」を含む)は一科目に合算されてしまうが、直接法の「連結キャッシュフロー計算書」を作成するためには、内訳科目毎に分離して連結処理する必要がある。
・中国では来年から、事実上、直接法・間接法双方のキャッシュフロー計算書が必要。
・近々、研究開発費が「費用処理」から「無形固定資産」への計上に変わっていく。
→これは、IFRS への一致であるとともに、2005 年以前への回帰でもある。
・ゆとり教育のため、会計に携わっている人でも「複利計算」ができない人もいる。
→しかし、これは改善されつつある。
・今後システムインテグレータの優遇制度復活を求めていくことで、システムの品質向上へ向けた活動に結び付けて
いく。
2.所感
当日、私は開始直前に会場へ到着したのですが、ほぼ満席状態でした。それだけIFRS移行に関する事は皆、重大な関心ごとなのだろうと認識しました。私自身、会計には直接関わっていないため、講演の中で始めて聞く単語も多かったです。しかし、簡単な例をあげてわかりやすく説明をしていただけたため、IFRS移行に向けて現行の連結会計システムにはさまざまな問題があることが、大変よくわかりました。
また、システムを作成したり改修するベンダーだけでなく、導入したユーザ、そして導入されたシステムを監査するシステム監査人にいたってもIFRSのしくみのみならず複利計算といった基本的な数学知識を身につけたうえで、今後の対応をしていかなくてはいけないということが、今回の講演で理解することができました。
報告者:No1710 小河裕一
※懇親会にて
懇親会では、講師を囲んで賑やかに歓談が行われました。
定例研究会が終わってすぐに帰られられる方が多いですが、毎回講演では話せない裏話や体験談などが聞けて大変勉強になります。今回も、何故か?政府の動向に詳しい講師から民主党の裏話や、福島原発の話、システム監査のISOに関する動向など、バラエティに富んだ話題で盛り上がりました。
初めてだと知らない人ばかりで敷居が高く感じられるかもしれませんが、皆気さくなメンバーばかりです。まだ参加されたことのない方は、ぜひ次回は懇親会もご参加下さい!
報告者:No1531 金子力造