会員紹介記事Vol.006  田淵隆明様

1.1 システム監査及びSAAJと関わりを持たれた経緯

もともと資格取得に積極的だったため、情報処理試験の資格取得の中で2回目の挑戦で「システム監査」に合格しました。その後、本会に入会し、2009年に「公認システム監査人」を取得しまた。

1.2 システム監査及びSAAJに関わる活動の中で、思い出に残る事例やエピソードtabuchi3

これまで、ERPなど基幹系システムとの関わりが多かったのですが、2009年3月にJ-SOXが導入された際、「システムと会計と法律の全てが分かる人材」の欠如が深刻な問題であると痛感しました。また、設計上の考慮不足について「運用でカバー」というフレーズを安易に使うSEが跡を絶たない現状を見て、我が国の将来に非常に危機感を覚えました。
また、自分の仕事では、某連結会計システムの法令対応不備について、これを内部から修正させることの難しさを痛感しました。「会計基準を深く理解しているSE」、「システム開発経験豊富な会計士・税理士」の欠乏は、我が国の発展における大きな阻害要因であると思います。なお、「金融商品取引法」の罰則の強化(虚偽記載の罰金は最高で7億円)などの流れを受けて、日本公認会計士協会の「IT委員会報告第31号」では、数値の誤りを直感的には把握しづらい「連結会計」、「減価償却」、「年金計算」の3分野について特に注意を喚起しています。
会員紹介の第2回で安本先生も述べられているように、「システム監査の法制化」を早急に実現させる必要があると思います。詳細は割愛しますが、企業の財務・経理システムに限っては「会社法」の若干の改正だけで実現可能です。
2012年6月の衆議院での消費税の公聴会では「公認システム監査人・IFRSコンサルタント」の肩書で出席させて頂きました。放送局員は「公認システム監査人」という資格についてご存知無かったようで、改めてSAAJの発信力の充実・広報機能の強化の必要性を痛感した次第です。なお、意見開陳の冒頭部において、「増税の前にやるべきこと」の一例として「システム監査法制化」を潜り込ませて頂きました(笑)。

2.1 現在のお仕事について

東京港区のコンサル会社に所属し、プロジェクトによって京都府長岡京市と東京都世田谷区を往復しています。コンサルティングの分野では、IFRS(国際会計基準)と連結会計をメインとしているほか、環境コンプライアンス、環境会計、交通政策も手掛けています。また、コラム等の執筆や、講演、政策提言(法令改正条文案作成)、メールマガジンの発行、国会議員や地方議員へのロビー活動等も行っています。

2.2 趣味として取り組まれているもの

現在、趣味として取り組んでいるものは、多言語比較研究です。私の母校の大学は非常に良い伝統があり、理系でも第三外国語を習得する人が多数いました。現在、SAP社の製品を取り扱う機会が多いのですが、メッセージにフランス語が混ざっていたり、DBの中枢にドイツ語が混ざっていたりします。この「マルチ・リンガリスト」を大量に育成している点が、最も東大に勝っている点であると思います。
なお、大学入試では、来年から原則的にセンター試験が5教科7科目に戻るとともに、(私立文系も含めて)「数学」の入試の必須化が検討されています。また大学入試の外国語が二ヶ国語となり、大学の卒業単位において外国語が三カ国語となる方向です。

3.1 今後取り組みたいと思われている事柄

2013年12月のSAAJ本部会報とも一部重複しますが、システム監査法制化プロジェクトのメンバの知識や知恵を借りながら、ロビー活動として以下のテーマに取り組んでいく所存です。

(1)システム監査の法的義務化
(2)新しいIT事業者評価制度の創設
(3)IT技術者の地位回復のための、研究開発費の資産計上の復活
(4)ソフトウェア(コンピュータプログラム)に対する製造物責任法(PL法)の適用
(5)個人情報保護法の全面見直し
(6)技術競争力強化やサイバー犯罪対策を考慮した電力エネルギー改革
(7)データセンター(DC)等での「電気通信主任技術者」(伝送交換)の配置の義務化
(8)原発・食品衛生・ISO等マネジメント系審査制度の「推進」と「審査」の組織の完全分離

3.2 SAAJの展望、課題

今回、沼野前会長の発案により、SAAJの会長選出方法が見直されました。これはSAAJの活性化に繋がると期待されます。しかし本来、理事の選出は堂々と選挙・投票で行い、事前の調整やそれに類する「李下に冠を正す」ような行為は慎むべきであるというのが私の信条です。
また、会員(特に公認システム監査人)の知識の陳腐化を抑制し、ステークホルダである被監査側の方々の信頼を失わないためにも、IPAの最新シラバスへの適合、およびその活動のSAAJ内や外部への広報の充実が、急務であると考えています。