SAAJ近畿支部第214回定例研究会報告 (報告者:荒牧裕一)

会員番号 0655 荒牧裕一(近畿支部)

1.テーマ   「金融DXの動向について」
2.講師    国立大学法人静岡大学 名誉教授
慶應義塾大学 システムデザイン・マネジメント研究所 研究員 遠藤正之 氏
3.開催日時  2025年9月19日(金) 18:30~20:30
4.開催場所  オンライン視聴(Zoom)
5.概要

金融DXに関して様々な動きが生じています。Embedded Finance(組込み型金融)、デジタルバンク、金融サービス仲介業の活用、銀行勘定系システム更改などの動向と金融機関のDXへの取組みの視点についてお話しします。

6.講演内容

メガバンク行員を経て大学教員になられたご経歴を持ち、『金融DX、銀行は生き残れるのか』(光文社)、『ITアーキテクトとエンジニアのための金融ITシステム入門』(科学情報出版)等の著書も執筆されている遠藤氏に、近年の金融機関におけるDX・ICTの動向について解説していただいた。
(1)Embedded Finance(組込み型金融)
・Embedded Finance(組込み型金融)とBaaS(Banking as a service)
・「Embedded Finance」を実現する銀行系サービス
・地域金融機関向け共同利用型・組込み型金融基盤
(2)地銀発デジタルバンク
・日本のインターネット専業銀行
・対面と非対面の融合(UI銀行)
・池田泉州HDのデジタルバンク「01銀行」開業
・eKYC(デジタルでの本人確認)
・共同利用型BaaS基盤「BeSTA-BaaS」
・北國銀行のデジタルバンクのコンセプト
(3)金融サービス仲介業の活用
・金融サービス仲介業 創設(2020年6月5日成立、2021年11月1日施行)
・金融サービス仲介業者(コンサル型、個人向けネオバンク型、法人向けネオバンク型、業務代行型、マッチングプラットフォーム型)
・金サ法のいわゆる5年見直しに関する懇談会
(4)銀行勘定系システム更改の本格化
・銀行勘定系システム刷新
・地方銀行のシステム共同化
・クラウド化の進展
・システム面、銀行勘定系システムの進化イメージと事例
・次世代バンキングシステム
(5)銀行小口送金の無料化
・ことら送金・少額決済
・ことら送金利用シーン、利用可能アプリ
(6)デジタル給与解禁
・我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移
・賃金のデジタル払い(デジタル給与)とは
・賃金のデジタル払い(デジタル給与)の認められる条件
・デジタル給与の仕組み
(7)ステーブルコイン
・資金決済法改正(2023年6月施行)
・ステーブルコインの分類と制約
・ステーブルコイン等への参入企業
(8)メガバンクの資本提携
・メガバンクとFinTech大手の資本提携
(9)金融機関に求められるもの
・アプリの充実とセットでの固定費の削減
・融資系サービスによる収益の拡大
・投資支援系サービスによる収益拡大
・個別のコンサルティング付の金融サービス提供による収益拡大
・システム自体の販売による収益拡大

7.所感

5年ほど前からFinTechという言葉が使われ、それ以降もEmbedded Finance(組込み型金融)やデジタルバンク等の金融業界に関係する新しいIT用語を耳にすることが多くなった。しかし、直接金融業界の仕事に携わっていない私は、FinTecとEmbedded Financeの違いもはっきりとは判らない状態だった。
そんな私にとっては、これらの金融機関におけるDX・ICTの言葉や概念を系統だてて判りやすく解説していただけたのは非常にありがたかった。また、個別のサービスの解説だけでなく根拠となる法令の解説や業界の枠組みについても説明していただけたので、体系的な理解につながった。